銭の花の色は清らかに白い。だが蕾は血がにじんだように赤く、その香りは汗の匂いがする
『細うで繁盛記』のあらすじ
大阪の料亭南地楼の次女 加代は、南地楼を創業して大阪でも指折りの料亭にした祖母ゆうから大阪商人の心構えを聞かされて育ちます。
父が亡くなって店を手放し、さらに戦争で焼野原となった大阪から伊豆・熱川温泉の老舗旅館「山水館」の元に嫁ぎ、旅館を盛り立てていきます。
『細うで繁盛記』の概要
昭和45年(1970年)1月8日から昭和48年(1973年〉まで放送された立志伝ドラマです(全79話+4話)。
『細うで繁盛記』第一部 1970年1月8日~1973年8月23日(全33話・新珠三千代)
第二部 1972年1月6日~1972年8月17日(全33話・新珠三千代)
『新・細うで繁盛記』 1973年8月23日~1973年11月15日(全13話・新珠三千代)
『細うで繁盛記』 1994年5月20日・1995年2月3日(全2作・古手川祐子)
『新・細うで繁盛記』2006年1月20日・2007年2月23日(全2作・沢口靖子)
覚書
銭の花ってどんな花?
祖母ゆうは幼い加代に、庭に金木犀の木を植えたが隣の金持ちにケチをつけられ、木を切らざるを得なかった時のことを話し、お金を儲けて金木犀よりももっと大きい良い匂いの「銭の花」を咲かせる木を植えると言います。
「世の中お金さえあったらどんな自由でも通る。銭の花咲かそと思たらどんな悪いことしたかて金がでける。けどそれではええ花が咲きまへん。きれいな花咲かせよと思たらな、汗水という水をどんどんやりますねん。それから苦労という肥やしをどんどんやって、ひとつひとつ大きいしていくのや。そうすると綺麗な美しい花が咲く」
「あんた大きいなったらおばぁちゃんの心の中に咲く銭の花、枯らさんように気ぃつけてくれなあきまへんで」
花登筺らしい台詞でした。
昭和のいびり役
昭和のドラマには、主人公をいびりたおす敵役、悪役がほぼ必ずと言っていいほど登場します。
嫁いびりは定番ですが、当時は『どてらい男』の坂田軍曹(藤岡重慶)と、この『細うで繁盛記』の加代の小姑 正子(冨士眞奈美)が二大いびり大王として君臨していました。
正子は牛乳瓶の底のような分厚い眼鏡で憎々しく「犬にやる飯はあってもおみゃーにやる飯はにゃーだで!」などと言いたい放題。
当時は憤懣やるかたなく見ていましたが、日本人は基本的に”いびり好き”なんでしょうか、いびればいびるほど視聴率は上がるし、二人共結構人気があり、当時の人気ドラマ『パパと呼ばないで』『雑居時代』や『子連れ狼』をはじめ、かなりの数のドラマに出演しています。
いびり役と言えば、近年でも泉ピン子、キムラ緑子、黒木華、柊子と枚挙にいとまがないですが、役の奥深さや垣間見える”人の良さ”が人気の秘訣となっている近年のキャラクターに比べるといびり大王たちは完全なる悪に徹していました。
『細うで繁盛記』 ディスコグラフィ
映像は第一話と最終話しか残っておらず、当然ながらメディア化も行われていません。
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