大いなるイメチェン
『前略おふくろ様』のあらすじ
料亭『分田上』の板前 片島三郎(萩原健一)が、花板の村井秀次(梅宮辰夫)、先輩の政吉(小松政夫)、若女将の浅田ミツ子や女将の浅田ぎん、三郎に想いを寄せる渡辺かすみ(坂口良子)と深川一番 鳶の『渡辺組』の面々、郷里の母 片島益代(田中絹代)や東京に出てきた恐怖の海ちゃん 岡野海(桃井かおり)などと、日常に起こるさまざまな出来事を描いた人間ドラマ。
『前略おふくろ様』の概要
『前略おふくろ様』(Zenryaku Ofukuro-sama)は、昭和50年(1975年)10月17日から1976年4月9日まで(料亭 分田上 全26回)と、昭和51年(1976年)10月15日から昭和52年(1977年)4月1日(料亭 川波 全24回)の2シリーズ放送された人間ドラマ。
覚書
ピラニア軍団
脇役、悪役、斬られ役。クレジットに載らない大部屋の役者たちの中で、さらに酒癖が悪いなどで宴会などにも呼ばれなかった志賀勝・川谷拓三が発起人となって、”主役を喰う”『ピラニア軍団』を作り、室田日出男・小林稔侍・片桐竜次・成瀬正孝らが加入しました。
『前略おふくろ様』で、半妻さん(室田日出男)、利夫(川谷拓三)は、まさに”主役を喰う”圧倒的な存在感を示しました。
超絶かわいかったかすみちゃん
かすみちゃん(坂口良子)は、おそらく全男性を虜にしてしまいました。
「あぁ、東京の女の人というのは、こんなにかわいくて積極的でいじっぱりでおちゃめなんだ」という印象でした。
ドラマの役とはわかっていながら、後年、女性と交際してもかすみちゃんのような言動をとってほしい、サブのような冷たい対応をしてみたい。それでも寄り添って欲しい・・。と思っていたのでした。
不動産王と云われた元旦那の借金40億円を一人で10年で返したことを知るにつけ、改めてイメージ通りの女性だと思いました。2013年に大腸がん起因で58歳で亡くなったことは後に知りました。もう私のほうが歳は追い越してしまいました。
アメリカでとれるコーシーよ
ぶっとんだキャラで登場した海ちゃん。でも心優しく人一倍傷つきやすい。
「おにいちゃん!」とサブを呼び、海ちゃんに片思いをする利夫もサブを「おにいちゃん」と呼ぶようになる。
衣装などは桃井かおりが自身で考えたもので、桃井かおりの存在感は半端ないものでした。
ショーケンのイメチェン、梅宮辰夫のイメチェン
『太陽にほえろ』『傷だらけの天使』と、長髪でがむしゃらなアウトローというイメージや役柄だったショーケンが、髪をばっさりと切り山形から東京に出てきた素朴で気弱な青年として登場したのにはびっくりしました。
ショーケンが倉本聰に「これまでになかったカラーを身につけたい」と相談に行き、倉本が「地方出身の板前の役だから長髪は切ること。脚本に一切文句をつけないこと」という条件をつけてショーケンが承諾して実現したものでした。
梅宮辰夫は、アクションもの、ヤクザものから、暴走族・不良グループ・スケバンなどが生まれるきっかけともなったプレボーイ路線の『不良番長』(’68-72)で、”男を泣かせる鶴田 女を泣かせる梅宮”と云われた東映の看板役者でした。
“昔はヤクザのいい顔”だったが、現在は足を洗って真面目な板前という秀さん。ドラマ中、ヤクザに脅されているサブのところへ乗り込み、数分後に恐ろしかったヤクザが萎れて出てくるという場面はなんとも痛快でした。
板前級の腕前
花板の秀さん(梅宮辰夫)もサブ(萩原健一)も、このドラマを通じて料理の修行をし、競うように料理の腕を上げていきました。特に梅宮辰夫は若い頃から美食家として知られていましたが、本作後は料理人としても有名になりました。
市川森一と金子成人
シナリオは、倉本聰に加え市川森一や金子成人も担当しました。特に市川森一の担当した回は鋭く重厚なテーマがあったように思います。
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